creconte’s blog

映画感想多め。本・マンガ・ドラマetc.扱う予定。歴史・政治・社会・サスペンス・アングラ・官能等

2024-01-01から1年間の記事一覧

春三月縊り残され花に舞う

表題の句は、大杉栄が、大逆事件での幸徳刑死を受けて遺した句という。 「エロス+虐殺」(1970)を観たのだが、エンディングで掲げられていたのがこの句で、この映画自体より、遥かに衝撃的だったので、タイトルに借りさせてもらった。 映画自体は、「前衛的…

カルラのリスト(2006)

ICTY(旧ユーゴスラビア特別法廷)検察官カルラ・デル・ポンテが、ユーゴスラビア紛争での民族浄化に関わった戦争犯罪者の摘発・告発すべく国際社会で苦闘する様子を追ったドキュメンタリー。 スイスのドキュメンタリー番組のもようで、カルラに対する番組のイ…

雨あがる(2000)

黒澤第3弾。 山本周五郎原作に黒澤が遺していた脚本や構想を、助監督小泉堯史が完成させた、黒澤の遺作。 雨あがる - Wikipedia 長雨で川止めされている長屋に雨宿りする人々と、妻と浪々の身だが謎の手練れ、ささくれ立つ民草たちにも何くれとなく心配りを…

蜘蛛巣城(1957)

今回も黒澤作品。 こちらも「大衆映画の王道」的な面白さだった。 森の奥で出会った物の怪の予言に惑わされて右往左往する戦国武将を扱う一種の心理映画であり、趣向もプロットも全く違うが、「羅生門」的なニュアンスはどことなく感じられる。 一方で、主要…

THE OSHIMA GANG(2010)

映画監督大島渚の関係者へのインタビューをドラマ仕立てにした、半ドキュメンタリー作品。 下記、ネタバレ注意(?) 大島渚は毀誉褒貶相半ばする監督で、たぶんまだ作品は直接は見たことがない。 が、無論興味はあるので知識の仕込みとして良かろうとチョイス…

隠し砦の三悪人(1958)

黒澤作品は、高校の時好きで何本か見て以来。 戦場遅参のため戦利品を獲り損ねた間抜けな農民2人が、ひょんなことから隠し砦とそこに隠された軍用金の延べ棒、また敵軍から隠れて姿をやつした家老六郎太(三船敏郎)と雪姫に出会う。六郎太は敵軍からの包囲脱…

Jホラーの走り「八つ墓村」と、寅さん金田一

映画としては2代目となる「八つ墓村」(1977)を見た。 (初代は1951年、片岡千恵蔵金田一) 八つ墓村 - Wikipedia 自分は何を隠そう、横溝の原作金田一耕助シリーズファン。 と言ってもここウン十年読んでないけど。笑 でも読んでたのは小学生時代だから、筋金…

ニュルンベルク裁判 人民の裁き(2004)

「世界映像遺産/ドキュメンタリーシリーズ」の1本。 レンタル大失敗だった。 というのは、本作は「ロシア語・字幕なし」だったのである…! 事前に情報確認不十分だった自分の完全なミスなのだが。 言葉が分からず、裁判シーンで殆どが占められたのでざっと…

パニック・イン・ミュージアム(2021)

モスクワ劇場占拠事件(2002)をモチーフにした、劇場テロサスペンス。 再現ドキュメンタリー系なのかと思ったが、ヒューマンドラマ仕立てのフィクションと見るべきだろう。 (英文wikiにはかなり詳しく経過が載っているが、精細には追えてない) Moscow theater…

スノーデン(2016)

米NSA(国家安全保障局)による個人情報収集を世に暴露した元同局職員、エドワード・スノーデンの伝記的映画。 桁外れの面白さだったが、10年近く昔の映画で、重層的な感想が浮かんだ。 いくつかの視点に分けて、整理することにする。 ・CIAが、「(技術に飽か…

オフィサー・アンド・スパイ(2019)

(原題はJ'accuse。ゾラの有名な見出し「私は弾劾する」) 一部ネタバレ注意。 ポランスキー監督作品。 19世紀末フランスのドレフュス事件の軍事法廷サスペンス。 ドレフュス事件には前々から興味があり、本も軽くだが、1,2冊ほど目を通したことがある。が、な…

ジャック・ザ・リッパー(1999)

19世紀末ロンドンの伝説の切り裂き魔、「ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)」を扱った物語。 史実は知らずに見たのだが、かなり忠実に再現しようとしたようだ。 ロンドンのホワイトチャペルで、娼婦の連続切り裂き殺人事件が起こり、「ジャック・ザ…

閉ざされた森(2003)

(原タイトルは「BASIC」) 4転5転のアーミースリラー。パナマ運河付近の密林に訓練に出たレンジャー部隊が消息を断ち、捜索隊は同士撃ちした生き残りを収容したところに、基地司令官が非正規の手段で、凄腕の捜査官を呼び寄せるところからストーリーが始まる…

赤軍-P.F.L.P 世界戦争宣言(1971)

若松プロダクション制作。 PFLP(パレスチナ解放人民戦線)のプロパガンダ映画。 勘違いというか、最初は「日本赤軍のドキュメンタリー映画」のつもりでレンタルしてしまった。 率直に「キツイな」というのが最初の感想。 「プロパガンダ映画」という形式のキ…

ザ・サークル(2017)

エマ・ワトソン主演、趣味の悪いリアル設定のSNSディストピア映画。 キラキラした先進的なSNS「ザ・サークル」運営会社に入社した主人公メイは、最先端のテクノロジーによる「シーカメラ」を装着することで、「『私(private=彼女の全生活)の世界の完全共有化…

題名のない子守唄(2006)

(原題は「La Sconosciuta」。イタリア語「未知」の意) 衝撃のSMサスペンス。 「これは官能系だ!」といつも予め決めつけレンタルするのだが、基本外すので、どうやら見抜く才能がないらしい。笑 (「SMサスペンス」という括りも妥当とは言えないだろう) 途中…

ピープル vs.ジョージ・ルーカス(2010)

ルーカスと、ルーカスの築いた(主にスターウォーズの)物語世界のファンダム(ファンの王国)の関係性を描いたドキュメンタリー。(以下、スターウォーズはSWと略記) 本作のことは、本に出ていて知った。 自分は、ルーカスにもSWにも特段の思い入れはない。イン…

ココ・アヴァン・シャネル(2009)

ココ・シャネルの生涯を辿ったフランス映画。 フランス映画は数えるほどしか見てないが、個々人のパーソナリティや人間関係の現れ方が独特で魅力的だ。 シャネルが長ずる20世紀初頭前後は、当然女性の職業的自立などまだない。 孤児院出身のシャネルは、お針…

マーガレット・サッチャー(2012)

(原題は「The Iron Lady」) 前々から気になっていた作品で、ようやくこなせた。 サッチャーは、「レーガン、サッチャー、中曽根」の一角を占め、「小さな政府」を強力に推し進めた、文字通り「鉄の女」という程度の高校世界史以上の知識から進んでなかった。…

わたしは金正男を殺してない(2020)

2017年の、クアラルンプール国際空港金正男暗殺事件とその後の政治的経過、そして2人の「実行犯」の女性2人(インドネシア人シティとベトナム人ドアン)の裁判を克明に追ったドキュメンタリー。 衝撃的な事件だったが、気づけばかなり前の事件だ。その後「犯人…

バトル・イン・シアトル(2007)

1999年、シアトルでの反WTOデモ・暴動を描いた意欲作。 シアトルは、個人的に直接ではないが、間接的に縁のある地で興味を持った。 これも恥ずべきだろうが、「シアトル暴動」のことは、本作で見るまで殆ど知らなかった。 作品そのものは、運動家たちと、市…

そして、ひと粒のひかり(2004)

新年一発目は少し前の映画(原題は「Maria Full of Grace」)。 昔テレビで井筒監督がレビューしていて印象的で、ずっと記憶に残っていた。 地元で職場でも家族ともうまくいかず、男友達との遊びで身ごもって金に詰まったコロンビアの女の子マリアが、麻薬の運…