米NSA(国家安全保障局)による個人情報収集を世に暴露した元同局職員、エドワード・スノーデンの伝記的映画。
桁外れの面白さだったが、10年近く昔の映画で、重層的な感想が浮かんだ。
いくつかの視点に分けて、整理することにする。
・CIAが、「(技術に飽かせた政府の好き放題の個人情報収集を疑問視する)真っ当な市民感覚」を持ったスノーデンのような人材を抱える包容力を持っていたことへの驚き。
また、最終的にそれを告発するに至る、「米民主主義と自由主義」の砦を守ろうとする一個人の良識と勇気への称賛。
・「告発することによる米国からの亡命」で、香港経由でロシアに渡ったという皮肉すぎる面白さ。
9.11テロ~イラク戦争で「監視国家」化した米国は、そもそも「ロシア化」していた。(そしてスノーデンが告発したのは、オバマ民主党政権下だったのである)
そうしたヒストリーを意識してないのか、その後は、ロシアに偏ったトランプ登場を今度は片方で非難していたという歴史的皮肉。
そして、トランプを「告発」した先にも、大統領再選は既に防ぎようもない模様という皮肉の連続。
・「グーグルのハイパー化させた検索エンジン」のようなものを、情報当局で開発して世界でほしいままに操作して個人情報を集め、また少なからぬ人々の人生を狂わせたり奪っていたこと。
・一方で、既に生成AIが暴れまわっている今時点の目から見ると、既に「過去」を描いたに過ぎない面も少なくない。現状、個人単位で、容易に自由に生成AIを任意に創出し、世界を混乱させ得る時代となった。片方で「あれ、今情報当局の役目って…?」ともなる。
スノーデンは、2022年にプーチンからロシア国籍付与されたとのこと。
「何重にもひねくれ曲がった現代社会」の重要な起源の一つを、本作で確かめられた気がする。