統合失調症(統失。映画内では当時の「分裂病」の用語が字幕内で用いられていた)患者の「心の中」に治療者が入り込んで治療を試みる、サイコSF。
大型の医療治験施設で、「神経伝達装置」という特殊な機械を用いて脳内の意識を操作し、治療者(1,2名)が統失患者の精神内に入り込み、心を開かせに行く。
独特の切り口と描き方だが、なかなか面白かった。
統失に関しては、昔ちらと情報を見聞きした程度で、十分な科学的・医療的知識があるとは言えない。
症状のせいで、特殊な世界観が見える中での生活を余儀なくされる、という程度。
(木村敏「時間と自己」は学生時代に愛読していたことがある。その中では分裂病者の「現象学的時間」論の記述が試みられている)
自分自身の無知や「偏見への壁」はないか、という「モヤモヤした霧の壁」が自分の中にわだかまっていることから目を背けてはなるまい。
鬱病やその治療法は既に世でも良く知られるようになったが、統失はそこまでとは言い難い。
そこまで遠くはない昔、家族の統失をめぐる、とある自殺事件が報じられたことがある。特定を避けるためここで詳しくは書かないが、筆者は当時、病気の偏見から自由になれなかったその自殺者に冷ややかな視線を浴びせていた記憶がある。
じゃあ翻って、今の自分はどうなの、という話なのだ。