ヴェトナム戦争時の国防機密文書公開を巡っての1970年代の新聞社内外の攻防を描いた、メディア・サスペンス。
ワシントン・ポストの女性社主グラハムの視点を主軸に描かれる(原タイトルはワシントン・ポストを表す「The Post」)。
ニューヨーク・タイムズとの報道合戦、自社の株式公開化、政権によるメディア弾圧という恐ろしいほどの葛藤の中で、グラハムが厳しい決断を迫られていく。
グラハムは、社主一族に生まれたが、正統後継者と目された夫の早世で自らも周囲も不本意なポストに就き、なおかつ直接戦争に関与した国防長官マクナマラとも家族ぐるみの親しい間柄という、内面の矛盾も抱えていた。
「メディア・トップと政権要路との癒着」というテーマは、安倍在世当時ではかなり生々しかったろう。
パソコンもインターネットもない時代の「機密」とか「セキュリティ」のアナログさやガバガバさというものも、可笑しみとともに懐かしい感じにも駆られた。
当時のヴェトナム反戦運動の雰囲気を何となく確かめられたのも収穫だった。