国連を舞台にした、かなり入り組んだ国際派サスペンス。
国連通訳官シルヴィアが、深夜に忘れ物を取りに行った際に、会議場で、アフリカのマトボで民族浄化を行う独裁者ズワニ大統領の暗殺計画を耳にしたところから話が始まる。
通報を受けた米SS(要人警護を担当するシークレット・サービス)では、数人しか話者のいない少数言語の会話を偶然聞き取ったというシルヴィアの証言を疑問視する。
その後SSは、暗殺計画阻止を前提に動き出したが、SSの担当官ケラーはシルヴィアが過去や思想傾向に嘘や隠し事をしているのではないかと疑り、その一方、暗殺者からの保護を望みつつも、自分の兄が暗殺計画に関与していないかをSSに悟られずに探ろうとし、互いの思惑はすれ違っていく。
SSに犠牲を出しつつ、ケラーがシルヴィアの過去を引き出していくに至る心理的駆け引き、SSとシルヴィアが、それぞれ同時的に、別の思惑で別の動きを別の場で遂行するというすれ違いが2転3転する展開から、一挙にクライマックスにもつれ込んでいく流れは圧巻だった。
民族浄化のサバイバーという悲惨かつ複雑な立場も、各登場人物の視点から巧みに描き分けてもいる。
ニコール・キッドマンは、本当に「画が持つ」。ずーっと眺めていても、それだけで飽きない。「南アフリカの白人」を演じているということも、それ自体で何故か面白く感じるのは不思議だ。