creconte’s blog

映画感想多め。本・マンガ・ドラマetc.扱う予定。歴史・政治・社会・サスペンス・アングラ・官能等

ワールド・トレード・センター(2006)

同時多発テロで、崩壊したWTCの救出劇の消防隊の話ーという認識はもとからあったのだが、厳密には、「崩壊直前のツインタワーに入って崩壊に巻き込まれた警官たちを救出する、消防隊・海兵隊たちによる救出劇」だった。

 

もはや身動きしようのない瓦礫の下で、目の前の仲間たちの死と、崩落と火災による火の玉に怯えるよりない地獄と、絶望的不安に苛まれる家族、そこからの警官2人(隊長ジョンとウィル)だけの救出の奇跡という闇と光を対照的に描いた感動劇。

 

映画という形で再現されないと、「現場ではこうだったのか」と知らなかった驚きもいくつかあった。

・がれきの下に埋まった警官隊が携帯した銃が、周囲の火災の熱で暴発し、同じく埋まっていた警官たちを脅かした

・救出に来た消防隊たちも、(無傷で元気などではなく)他の現場から転戦してきて満身創痍の状況だった。現場から警察署に戻ってきた警官なども同様

・既に崩壊したツインタワーは、崩壊が連続して起こる大きなリスクと時間の制約の中で、埋まった警官たちの捜索と救出が行われた

etc.

 

映画は、救出劇よりは、瓦礫内に唯2人生存したウィルとジョンだけが、絶望の中で救助を待つ地獄を軸として描かれる。

目を瞑って意識がなくなれば死が待つという状況下で、互いに身動きとれない中で、相互に励まし合って声を掛け合って、来るかどうかも分からない救助を待つ。

仲間を死に巻き込んでしまい後悔に駆られる隊長のジョンに対し、ウィルは常に冷静的確な判断への尊敬と、「自分は来なければ一生後悔してましたよ」とを(地獄の中で)伝える。

 

警官たちが、仲間同士に「I love you」という言葉をかけていたのが、とても印象的だったし感動もした。

この「love」は、間違いなくキリスト教的な「love」であることは疑いえない。

日本人同士、日本社会では、こうした言葉は決して出てこない筈だ。

同じく、さらなる崩落と死を予見しての祈りの言葉に、聖書の言葉を引用していた。

 

米国人たちは、リアルタイムで、WTCに突っ込む航空機と、引き続くビルの崩壊をどのように眺めていたのかー。

その視点で眺めるということは、実は特にこれまで興味を持ってこなかった。

そうした自分自身のポジショニングについても自覚を新たにさせられた映画でもあった。